提言と主張
Purpose
提言の趣旨
私たちは、政府と与党が「こども家庭庁」創設や「こども基本法」の制定・施行へと動き出したことを受け、子育て政策をさらに大きく前進させるために動いてきました。これまでの政策が「少子化対策」「待機児童対策」「虐待対策」など課題別に対策を講じてきた状況を改め、あらゆる子どもと子育て家庭、妊産婦を切れ目なく支える包括的な「家族支援政策」への刷新が求められていると考えたからです。
全ての子どもや妊産婦の安心と幸せを実現するには、誰一人取り残さない、包括的な支援の仕組みと財源が必要と考えます。子育てが多難になっている現状を直視すれば、「子どもや子育ては地域・社会で支える」という“共同養育”の考えと助け合いの再構築が必須です。フランスや北欧など少子化を改善させた先進国にならい、総合的でユニバーサルな「家族支援政策(family policy)」の実現が求められます。
私たちが考える家族支援政策の第一は、ハイリスク家庭に絞られている母子保健の対象を、全ての妊産婦と家庭に広げ、専門家による「妊娠からの伴走型支援」を提供する〈国民皆支援〉です。第二は、深刻化する孤立から親子を守り、全ての子どもが地域の仲間と共に健やかに発達する環境に恵まれるよう、保育を利用できる〈国民皆保育〉だと考えます。
介護保険制度の創設で、高齢者のケアが「社会の連帯責任」へと変化したように、子育ても社会連帯にもとづく政策へ変えることが必要です。それがひいては、日本の社会や地域を衰退や消滅から救う未来投資にもなると考えます。
Proposal
〈こども子育てまんなか政策〉アピール
2022/11/28
子どもと家族のための緊急提言プロジェクト
一般社団法人あすのば
にっぽん子ども・子育て応援団
みらい子育て全国ネットワーク(miraco)
わが国の子ども子育て政策はいまだ脆弱で、社会的支援が不足するなか、育児不安や産後うつ、虐待、貧困、子どものいじめ、不登校が広がっています。若い世代は、子どもを持つ将来に希望を見いだせず、結果として「産み控え」や少子化が一層加速しています。国が「こどもまんなか社会」の実現へ動き始めた今、子どもと子育て家庭の安心と幸せが最優先される社会を実現するため、危機感を共有する人々と一緒に、以下の〈こども子育てまんなか政策〉の実現と新たな財源の確保を求めて動き出します。
子どもと子育て家庭が主人公となり、主体的に生きることができる社会を実現するため、3つの柱からなる基盤の政策体系を整え、そのための財源を確保することが必要と考えます。現状は、縦割りでバラバラの支援制度を当事者が調べ、申請し、要件をクリアしてやっと利用できるハードルの多い仕組みのため、支援が必要でも申請すら諦める人、必要な支援にたどりつけない人を制度が作っています。全ての子ども、保護者、妊産婦に母子保健や保育などの基礎的支援が権利としてユニバーサルに提供され、誰もが情報入手や利用手続きをワンストップでできる仕組みを築くことが、少子化と人口減少という「有事」を乗り越えることにつながなり、国民全体の利益となる未来投資にもなると考えます。
こども家庭庁構想に向けた「子ども・子育て政策の改革 5つの緊急提言」
〜すべての妊産婦と親子を孤立させない〈皆支援〉〈皆保育〉の実現を~
2021/11/9
子どもと家族のための緊急提言プロジェクト
新型コロナウイルスの災禍は、子どもと子育て家庭への社会的支援の乏しさを浮き彫りにしました。子どもと親、妊産婦をめぐる社会環境は激変しており、妊娠による葛藤、産後うつ、育児の孤立、児童虐待などが増大しています。私たちは特に妊娠・出産、乳幼児期の子育てについて、切れ目のない支援の実現が急務であることをここに提言します。
いま、国においても、子ども・子育てに係る縦割りを克服し、一元的に所管する「こども家庭庁」創設が検討されています。安心して産み育てられる社会環境の実現を目指すなら、あらゆる家族と子ども、妊産婦を継続的に支え、孤立させない仕組みを作ることが必須であり急務です。それは、ひいては少子化危機の克服や日本の未来に資するものと考えます。
《5つの緊急提言》
1.
安心して妊娠・出産、育児に臨める社会環境を確立すること
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妊娠・出産、育児の経済的負担や不安を解消し、誰もが安心して産み育てられる環境を整備すること。
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妊娠確定診断、産前産後の健診、分娩、産後ケアを医療保険適用とし、自己負担をなくすこと。
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保険適用となるまで、当面は、妊娠や分娩にかかる費用の実態を調査し、出産育児一時金を実態に合わせて増額すること。
2.
すべての人に「妊娠からの伴走型支援」を保障すること 〈皆支援〉
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妊娠・出産・産後のサポートに精通した専門家による、一対一の伴走型支援を提供すること。産後うつや乳児虐待につながる産前産後のメンタル問題や家族問題にも対応できる専門性を備えること。
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専門家が常駐し、子どもや家庭のあらゆる相談を受け止め、専門支援につなぐことができるワンストップセンター(子ども・子育て版「地域包括支援センター」)を全国の身近な地域に設置すること。
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妊娠期から産前産後、育児スタート期を通して、親としての学びや情報収集の機会、地域の仲間づくりも視野に置いた支援を提供すること。
3.
すべての子どもに発達と成長の環境を保障し、すべての家庭を孤立から守るために「保育保障」を実現すること 〈皆保育〉
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親の就労の有無にかかわらず、発達と成長の著しい時期にある子ども自身へ多様な体験を得られる環境を保障する観点から、すべての子どもに良質な保育を利用できる権利を付与すること。
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子どもの発達課題や障がい,医療的ケアなどの事情、出身文化の違いや夜間保育といった多様なニーズも、自治体が把握し地域内に受け皿を用意して、インクルーシブ(包摂的)な保育を実現すること。
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すべての子どもに「乳幼児期からの質の良い教育・保育」へのアクセスを保障すること。施設に係る安全基準の強化、職員配置基準の改善に加え、保育・教育実践に係る専門機関による評価の受審義務化と公表など、英国Ofstedのような「保育の質と安全」を担保する仕組みを確立すること。
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保育施設による家族支援の機能を再評価し、希望する家庭に利用を保障すること。育児休業中も含めて在宅で育児する家庭にも、保護者のレスパイトや学び合いの場としての利用も認めること。
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保育の利用申請に対し、利用可能で適切な保育施設を紹介するよう自治体に義務づ付けること。
4.
国の所管を統合した「子ども家庭省」を創設し、総合的・横断的な司令塔機能を持たせること。併せて、自治体の行政窓口も一元化を図ること
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関係所管を統合し、子どもと家族のための包括的な政策を推進する「子ども家庭省」を新設すること。
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自治体の行政窓口も統合・一元化し、「たらいまわし」をなくすこと。
5.
すべての子どもと親、妊産婦のための「ファミリーポリシー(家族政策)」を確立すること。「子どもと未来保険/基金」を創設し、財源の統合と確保(GDP比3%を目標)を実現すること
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あらゆる家族と子どもを総合的に支援する観点から、包括的な政策パッケージとなる普遍主義の「ファミリーポリシー(家族政策)」を確立すること。仏、英、北欧などが家族支援を行う包括的な「家族政策」を社会保障に位置づけているように、日本でも全世代型社会保障を実現する改革として取り組むこと。
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「家族政策」の下に、母子保健、保育・幼児教育制度、社会的養護、地域子育て支援など縦割りになっている施策を統合し、個人を給付の権利主体とした「子ども・子育て総合支援法」を制定すること。
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子ども・子育て政策や家族支援に係る財源を統合し、「子どもと未来保険/基金」(仮称)を創設すること。
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財源規模は、少子化を改善させた家族政策の先進国を参考に、家族政策の費用としてGDP比3%程度を投入すること。
安心して妊娠・出産、育児に臨める社会環境の確立
すべての人に「妊娠からの伴走型支援」を保障すること 〈皆支援〉
すべての家庭を孤立から守るために「保育保障」を実現すること 〈皆保育〉
「子ども家庭省」を創設し、総合的・横断的な司令塔機能を持たせ、自治体の行政窓口の一元化を図ること
「子どもと未来保険(基金)」を創設し、財源の統合と確保 (GDP比3%を目標)を実現すること
緊急提言とともに検討を求める《3つの要望》
1.
妊娠から子育てまで、専門的知見に基づいて支援できる専門人材を十分に育成し、切れ目なく親子を支えていくための基盤を整備すること
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助産師、保健師、医師、看護師、保育士、ソーシャルワーカーなど、妊娠・出産・育児に係る専門知識と経験を持つ人材を強化・育成し、地域に必要数を配置すること。また、有資格者の再就業をバックアップし、専門性に相応しい処遇改善を図ること。
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NPOや市民事業団体などによる子育て支援事業や居場所づくり、産前産後サポート、交流活動など様々な活動をバックアップすること。
2.
子どもの権利のための調査・勧告・報告を行う独立機関「子どもオンブズパーソン/コミッショナー」を創設すること〉
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子どもの権利を保護・推進する観点から、国連が設置を推奨している専門機関「子どもオンブズパーソン(コミッショナー)」を、独立組織として法制化すること。
3.
子ども・子育て政策に係るデータ収集、効果検証、改善の検討などを行う研究機関を設置すること
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子どもや子育てに係る政策の効果を高める観点から、科学的なアプローチを強化するためにデータ収集や効果検証を行い、政策のPDCAサイクルを具体化する調査研究機関を設置すること。